俳句コーナー日本伝統の俳句を知ろう
俳句コーナー日本伝統の俳句を知ろう
一日一句再課題次回解説します。
原句薔薇咲けるピアノの横の玻璃の鉢
前回の解説
原句藤の花川面を下に喫茶店
解説読者には景が見えてきません6参照。
作者はもっと表現を工夫しましょう。
参考藤咲けり瀬音を下にカフェテラス
俳句の基本的な型藤田湘子20週俳句入門参考
第一型式季語や中七名詞
例蜩や転舵の先の天主堂
第二型式上五六音や季語
例交番の土間の野菜や盆の月
第三型式上五中七季語かな
例東京を捨て来し母の踊りかな
第四形式季語中七動詞けり
例手袋を仕舞ひロザリオ出しにけり
作句のポイントこれで完璧
1俳句は意味でなくリズム。五音七音五音上五中七下五の鉄則を守ろう。以下音の例カレー三音車中三音黒鍵こっけん四音チューリップ五音十中八九七音
リズムの悪例日溜まりにバス待ちをりぬ笹子鳴く
リズムの良例日溜まりにバスを待ちをり笹子鳴く
どうしても字余りが発生する場合は、その語句は上五に置くこと。七五でリズムがたもたれる。
字余り佳例盲導犬前へ前へと聖夜かな六七五
2俳句は日記やお話ではなく、眼前の景と季語で表現するポエム。なお景は事実にとらわれず自由に創作しよう。
原句ラグビーや洋酒の小瓶ポケットに季語が俗な感じ
参考観梅や洋酒の小瓶ポケットに季語をポエム風に
原句髪切を明日に予約す春一番景がない
参考春一番タウンページの美容院タウン誌を見せる
3説明報告事柄理屈概念観念時間の経過などは避け、眼前の景を自分に引きつけて感慨や思いを詠い上げよう。
説明悪例食卓に冬の苺と詩集かな食卓の、とする
報告悪例朝の膳二切れ焼くや白い餅
事柄悪例寒月や町に残りし松と墓残りし事柄
理屈悪例キリスト像流れる血なく春の昼
概念悪例ただ歩くことが目的木瓜の花目的概念
時間経過悪例寝床まで木屑つきくる夜なべかな
4俳句は眼前の景の一瞬を切取る文芸。読者に景を見せることが必須条件。そのためには、具体的な物や鳴声行為などを句に出すのがコツ。
悪例変わりばえせぬ日常や秋に入る言葉だけ
悪例案内の略図書きおる秋灯案内は概念で抽象的
5動詞は少ないのがよい。動詞があると説明になりやすい。
佳例動詞が無い交番の土間の野菜や盆の月
動詞の多例雉子の声沁みて里山暮れにけり沁み暮れ
佳例里山の暮れんとするに雉子の声暮れる
6独りよがりの、読者に負担をかける句に注意しょう。作品は何度も推敲を重ねて、表現が読者に判りやすいか確認しよう。
勝手な句やわらかな日のさす隅や冬すみれどこの隅か
勝手な句咲きみちし税務署前の桜かなそれがどうした
7俳句の主人公は常に自分自身。作者の息吹を感じさせよう。
悪例一枝の椿挿しある硝子瓶作者が見えない
佳例硝子瓶椿一枝活けにけり自身の事として詠う
8当り前なことは詠はないこと。だから俳句因果関係句は常識的な当り前の句になる。常識的な句は少しも面白くない。
当り前の悪例コスモスや恋の行方のままならぬ
当り前の悪例里人の朝は早しよ早苗籠
当り前の悪例蕗の薹?過ぐ風の緩びけり
因果関係の例帯解きて己にもどる石蕗の花
因果関係の例うぐいすの声に目覚める旅の宿
9季語とフレーズが近過ぎてはいけない、離すこと。
悪例細目して針糸通す春炬燵季語が近いと平凡な句に
佳例細目して針糸通す春の雨
但し、ただ離せばよいというものではない。季語がフレーズと響き合うかどうかで作品の可否が定まる18参照。
10季語は季語のまま使う。フレーズで季語を詠ったり説明したりしてはいけない。季語には大きな連想力が与えられており、説明するような内容はすでに含まれている、と伝統的に約束されている。
悪例まなかひに木の芽山あり昼の月季語の木の芽山を説明している
佳例木の芽山昼月淡くありにけり昼月をしっかり詠う
11時間の流れの中での一般的な作句のあり方は、その流れを出発原因経過到着結果と分け到着結果、すなわち到着結果の現場で詠うのを基本としている。相撲に例えれば仕切りや取組みでは薄味なので結果の決まり手を詠うということになる。
12俳句の中で美味い楽しい哀しいといった感情や感想を表現しない。これは作品を鑑賞した読者が出す答である。
悪例紅梅や夫退院のよき日なり夫つま
佳例紅梅や夫退院の日なりけり
13気どりの言葉にたよってはいけない。また触れる偲ぶほのか窓辺小島ま白や使い古された小さい秋春の足音人待ち顔等は使い物にならない。
悪例眼前の聖書に触れず寒夕焼触れず読まず
悪例庭土の香ほのかや春の雨ほのかや香の立つや
14省略語を使用してはならない。例えばバス停携帯高速等は正しく表現するか他の表現を工夫する。
悪例バス停に母送りゆく師走かな
佳例通りまで母送りゆく師走かな
15孫やペットは作者のみの関心事で普遍性がなく思い入れが強く、ポエムとしての純度が極めて低くなるので避ける。またお茶お菓子などおも幼児語に近いので避ける。
16カナ文字使用は、作品が軽しくなるので極力避ける。
悪い例バラの香や瞼とじれば父の顔瞼とじれば説明
佳い例薔薇の香や目裏に浮く父の顔
17季語が動かないよう注意しよう。
悪例一言が和解のきざし福寿草日向ぼこでも成立
佳い例福寿草見しを和解の兆しとす季語は動かない
18俳句の神髄は季語とフレーズの響き合いの良否による。
原句葉桜や活き魚にふる化粧塩
参考矢車や活き魚にふる化粧塩子への料理と想いが広がる。矢車夏の季語
ーおわりー